本当に時間が過ぎるのは早い。
3ヶ月前に、
という記事を書いた。
この時、自分なりに「ビジネスアナリストとなる資質」として7つまとめたのだが、
それぞれの資質について、具体的にはどういうスキルで、
なぜ必要なのかを掘り下げたことを紹介したい。
(3月下旬に書き上げていたことをすっかり忘れたまま6月になってしまった)
その時にあげた7つの資質をおさらいしてみる。
まずはさっと以下を確認頂きたい。
※時間が許すのなら、上のリンクから前回の記事をざっと一読頂けるとうれしい
(読了時間は5分ほど ※リンク記事まで見ようとするともっとかかるけど)
1.問題解決をするために必要な情報をそろえるスキル
2.全体を俯瞰したものの見方ができること(システム思考)
3.能動的、主体的な行動力
4.責任感
5.信頼と協力を得るコミュニケーション
6.誠実な人柄
7.BAという仕事が好きなこと
1.問題解決をするために必要な情報をそろえるスキル
これは、なぜ、なに、どのように、という疑問をそのままにしないで、
調べて決める(定義する)ことをするためのもの。
そもそもの、問題解決(プロジェクトのゴール)が可能かどうかの調査と、
目的と手段の方向性(プロジェクトのスコープ)を立案する。
あとあと困らないように、想定外をつぶすための作業も含まれる。
そこでBABOKの知識は前提として持っておくべきだろう。
定石を知っておくことで、判断にかかる時間を短縮し、
情報が揃わない中でも予測を立てることができる。
ベースとなるタスクリストのフォーマットを予め持っておいて活用することで、
抜け漏れをスピーディに洗い出すこともできる。
BABOKだけでなく、多くのケーススタディ(事例)に触れておくことも大事だ。
もちろん、自身で経験したことが資産になっていくのも当然だが、
世の中にある事例を読み漁ることも必要だと思う。
クライアントを含めた、その他のプロジェクトメンバーでは見落としがちな事柄に
スポットを当てられるのではないかといった期待値は、BAにこそ高い。
その期待に応えられるだけの知識は前提として入れておきたい。
参考:http://www.iiba-japan.org/about/Business-Analysis.html
2.全体を俯瞰したものの見方ができること(システム思考)
具体的なひとつの判断を求められたときに、この考え方が出来ていないと
取り返しのつかないことになる。
例え話をさせてほしい。
「晩ごはんを作る」というプロジェクトの定義が、
「栄養バランス」と「決められた時間に食べはじめること」だとする。
そこで、「野菜を多く取り入れたカレーを作る」ことに決めたとする。
しばらくすると、具体的な判断を迫られる。
食事開始の予定時間がまもなくなのに、にんじんがまだ煮えていない。
この時、「にんじんをどうやって早く煮るか」に焦点を当てすぎていると
システム思考はできていないとなる。
当初の定義に立ち返ると、
「栄養バランスの取れた食事を予定時刻に食べ始める」ことが
重要だとしている。
さらに優秀なBAだと、この課題の達成は
「その次のフェーズで"決まった時間に就寝できること"に繋がるから」
というところまで、視野に入れるかもしれない。
そうなると、「にんじんをどうやって早く煮るか」については大きな問題ではない。
課題達成に繋がるのであれば、
「にんじん以外の野菜、例えばトマトを別で食べさせる」
でも良いし、
「食べさせたい量のにんじんを別の皿にとりわけ、レンジでチンする」
でも良いし、
「にんじんを除いた状態でカレーを盛り先に食べさせ始め、煮えたあとににんじんだけ追加する」
でもよい。
たとえが長くなってしまったが、「ゴールの方向を向いているか」を前提にした
行動指針が重要なんだということだ。
それがシステム思考だと思う。
目の前の事象にばかり囚われると、その点でのみ解決に至っても、
他の部分で悪い影響が出てしまうことが多いのだ。
3.能動的、主体的な行動力
「物事を始める役割」なのだから当然と言えば当然。
具体的に言うと、
・情報がないからまだ行動できない。
・クライアントの判断が遅れているから次に進まない。
・プロジェクトメンバーが集まらないから開始できない。
と、「~だから~できない」という人は、BAには根本的に向いていない。
しかし、情報や知識を多く持つひとにこそ、この傾向はあると思っている。
実際、誰しも間違えたくはない。
だからこそ、情報や状況、知りえることを先に知りたいと思うのもわかる。
ただ、行動力とは、限りある情報を活かし、歩を進める勇気が重要なのだと思う。
もっと言うと、みんなが足踏みしてしまいそうなときに
リーダーシップの取れる人間であることが求められる。
そういう意味では、コーヴィー博士の七つの習慣の
主体性/ゴールを定義して始める/優先順位付け
といった行動特性は、BAにとって特に必要なものだと思う。
4.責任感
BAという職種だけではないが、影響範囲の大きい仕事だからこそ、
責任感があることは特に重要な資質だ。
とにかく、いろんな覚悟が必要だ。
「始めたプロジェクトは最後まで逃げない」という覚悟も必要だし、
「失敗したプロジェクトは自分の責任で(途中でも)終わらせる」という覚悟もある。
そして、一番大きな責任は、説明責任だと思う。
5.信頼と協力を得るコミュニケーション
コミュニケーション能力が重要なのは言うまでもない。BAとして行う業務全般に関わる。
しかし、自分の見解では、
特に「信頼と協力を得るための」コミュニケーションが
特に重要だと感じた。
BAが関わるプロジェクトは、ほぼ例外なく規模の大きなものだ。
だからこそ、「ひとりでやる仕事」というのはほとんどなく、
自分以外の誰かが関わる仕事を継続的にやっていくことになる。
そして、1~4で書いてきたことを自分でも思い返すと、BAがやらなくてはいけない仕事は、
量として膨大で質は非常に高く難解である。
そうなると、「誰かにやってもらう仕事を切り出すこと」「協力を得ること」
「その仕事において、価値観をスピーディに共有すること」は絶対に必要だ。
そうなると、BAのまわりにはたくさんの仲間が必要になる。
信頼関係の構築のためのコミュニケーションは不可欠となる。
多数に説明するプレゼンテーション能力も、商談をまとめるネゴシエーション能力も
コミュニケーション能力のひとつで、あったほうがいいのは言うまでもない。
しかし、BAという職種を機能させるために特に重要なのは、
仲間を作るコミュニケーションづくりだ。
単純だが、それが、プロジェクトの成功に一番近づくと思っている。
ちょっと余談だが、「不格好経営」の著者、南場氏が
「助けてくれと言ったほうが優秀な人間は動く」というコメントをしていた。
そういったコミュニケーションの根底には、やっぱり信頼があるはずだ。
6.誠実な人柄
これを言ってしまうと元も子もないのだが、人柄がいいというのは重要だ。
BAはとにかくいろんな人と絡む職種。
一般的に好かれる人格を持っていることは強力なアドバンテージになり得る。
特に、誠実であることだ。
誠実というのは、言葉に出していうとどうも胡散臭いが、具体的に言うと
・正直であること
・覚悟のあること
この2つだと思う。
正直というのは、相手によって意見を変えないことだ。
そして、誰も見ていないところでも、同じ行動をすることだ。
人に対して、誠実であることだ。
覚悟があるというのは、やり遂げることを諦めないことだ。
最後失敗に終わることになっていても、幕引きまで責任を持つことだ。
この2つの誠実さを持っている人格の人は、基本ブレないと思っている。
"ブレない人"というのは、一緒に居てとても居心地がいいはずだ。
7.BAという仕事が好きなこと
1~6の順番は、自分の中で考察した結果の難易度順にしている。
しかし、自分でも書いていて思ったが、1~6が出来ているひとは、
BAでなくても、どんな職種だってうまくできるだろう。
「これは、経営者に必要な資質だ」と言っても話が通りそうだ。
改めて感じたことは、BAでもPMでも、上流工程に行けばいくほど、
人間力というか、人として基本的な部分での資質がより濃く問われるんだと思う。
その上で、BAになる適性というのは、やはりBAという仕事が好きなのかどうかにかかっている。
BABOKはとてもよく出来ていると思う。
これを知識として知っておくことは、非常に重要だ。
そして、その知識を活かして、成果を出すことを楽しいと思うことが
BAとして最後に必要な資質なんだと思う。