もう2年くらい前の話です。

友達と「合理的な経営って何なんだろう」という議題があり、話し込んだのでした。 
その頃、私は経営側の仕事をするようになって、まだ新米のころです。

2010年3月のものですが、読み返してみて、「みんなどう思ってるのかな?」と
気になったので、そのころのブログの内容を転載してみます。

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私の持論としては、
「そもそも日本の企業風土、日本人の慣習において合理的経営はそこまで合っていない」
と考えています。 
少なくとも、社員数が1000人以上の大きな会社ならともかく、特に中小企業にとっては。

そこで思い出した昔話からはじめたいと思います。 


実は昔、私は中小企業診断士の資格を取るべく、ある専門学校に通っていました。 

MBAも中小企業診断士も、どちらも経営コンサルタント的な資格とされています。 
中小企業診断士は、「和製MBA」なんて言われたりもします。 

そこで、合理的経営手法が日本風土、日本人の慣習にあっているか否かを、 
MBAと中小企業診断士の比較を例に出しながら、考察したいと思います。 

昔々、中小企業診断士は、経営コンサルタント的な業務はなく、 
その名の通り「診断」しかしない職業だったそうです。 

業務は中小企業の健康診断みたいなもので、病があっても指摘するだけで治さない。 
ようは、「経営に対しての助言」は業務としては行わないものでした。 
※する人はしていたようですが、中小企業診断士の基本業務ではない 

数年前、「助言」を基本業務に加え、試験科目に追加したあたりから、 
より公に「経営コンサルタント的」と呼ばれるようになったのです。 
(今では、「経営コンサルタントとして唯一の国家資格」とさえ言われています) 

対して、MBAでは、こちらもその名の通り経営学を極めた学問です。 
研究色よりも実務に立ち返り、実益を追求する、これこそ 
経営コンサルタントになるため学問と言えるものです。 

それは、資格を取ったからどうなるといった日本的な発想からは遠く離れた、 
あくまでも実益を上げてこそMBAの称号が光るような印象を受けます。 
※そもそもMBAは資格ではなく博士号(経営学修士)なので、 
 弁護士資格や、税理士資格といったものとは元来別物です 

そのため、MBAでは、経営状況を解析することも、経済状況読むことも、 
マーケティング手法を検討することも、企業戦略をプランニングすることも、 
全て「合理的に利益を得ること」が目的で、各理論は手段にしか過ぎません。 

その点、中小企業診断士は、元々の制度趣旨である「診断」に特化していたという経緯から、 
MBAのように「利益をあげること」が目的ではなく、 
「経営状態を把握(診断)することで、会社が潰れないようにする」という、 
MBAの根本から鑑みると非常に後ろ向き(?)な背景が予想されます。 
※後ろ向きとは言わないにしても、「より儲ける」ではなく、
 「赤字にならないようにする」という消極的な感じはしますよね? 

そこで、これは私の偏見なのですが、日本の風土としては、 
「儲け過ぎるのは悪」とか、「贅沢は敵」とか、そういった文化が少なからずある気がします。 

「より多くの利益」を出させるコンサルタントよりも、「潰れないようにする」診断士の方が、 
職業として認められやすかったのではないか?と思うのです。 

さらにこじつけると、中小企業診断士は、読んで字のごとく「中小企業」を冠しています。 
より多くの利益をあげている「大企業」を、名称からして排除していることを見るに、 
やはり、と思ってしまいます。 

前述した、私が受講していた中小企業診断士受験講座での話です。 
ある時、講師が、 
「本当に"合理的な経営手法"は、実際の中小企業には合わない。」 
「日本の中小企業は、"慣習"と"人情"とが入り混じった感情論を重んじ、 
これらを無視して経営を行わないからだ」 
と言っていたことを思い出しました。 

例をあげます。 

とある町に山崎工務店という中小というか零細企業があったとします。 
社長は父ちゃん。専務はお母ちゃん。息子と甥っ子が現場でがんばっています。 
父ちゃんは営業兼現場監督で母ちゃんは経理兼総務、庶務。 
息子は大工。甥っ子は見習いだとします。 

給与は父ちゃんが50万。母ちゃんが30万。息子が25万で甥っ子は20万だとします。 

生々しい話、母ちゃんの仕事が4人規模の経理と事務作業であれば、 
30万のコストは高すぎます。 
合理的経営手法を取るのであれば、15万程度の事務職をパートで 
雇い入れたほうが人件費を半減できます。 

また、さらに母ちゃんは20万程度の報酬で別の会社に働きに出れるならば、 
会社的には15万のコスト削減となり、家計としては35万の収入になるので、 
より合理的といえそうです。 
※株式会社の場合、厳密には15万のコスト削減分は企業の損益になるので、 
 直接家計には入りません
 (その分父ちゃんの給与をUPしちゃうとかやりようはいくらでもありますが) 

しかし、上記の零細企業が100社あったとして、上記のような判断に踏み切る
経営者は恐らく1%もいないと思っています。 
なぜなら、日本的な思想では、会社はビジネスではなく、人生の一部であり、 
そこには合理性を越えたいろんな感情論が混在しているからだと思うからです。 

さて、もともとの疑問点だった、「日本に合理的経営手法は合うのか」という問いは、 
この考察だと「合わない」という結論に至ってしまいます。 

しかし、そこは日本人の柔軟性が幸いするのか、「和洋折衷」的な思想であれば、 
受け入れられる、と思います。 

ようするに、「義理や人情を概ね取り入れつつ、その前提を守る合理性」が、 
日本の風土にあった、日本の中小企業にあった経営哲学に成り得るのでは、と。 

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と、まぁこんな考察に終わっているのですが、今では、「折衷案」が正解だと思います。

事実、世の中は2年前よりは景気が回復してきたとしても、
まだまだ中小企業にはつらい状況があると思います。

「望んではいないが合理化しないと会社がつぶれる」という局面が
多くの中小、零細企業を襲ったと思うのです。

その中では、母ちゃんを解雇し、パートに出てもらわないと会社回らないといった
切実な経営状況に陥ったところも多くあったでしょう。

だからと言って、私は今でも「合理的経営」だけでは立ちいかないと思っています。
あの頃から2年、経営の仕事をさせてもらって、より強く思うようになりました。

ではでは。今日はこのへんで。


 
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